ドナルド・キーンは1922年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学名誉教授です。
彼は明治天皇を、当時の皇帝の中で世界一の存在だったと言います。その理由は、絶大な権力を持っていながら行使しようとしなかったことであるとしています。

この本の第三章「己を捨てる」から見てみましょう。
引用開始
夏の間、どんなに暑くても、避暑地に行くことはありませんでしたし、冬も避寒地に行くことはありませんでした。。日本の各地に明治天皇のための別荘ができていましたが、一度も行ったことはありません。側近が静養を勧めると、天皇はこう応えるのです。朕は臣民と同じことがしたい。天皇は日本人の多くが酷暑、酷寒にもかかわらず働いているのに、自分だけが一人のんびりと静養する気にはとてもなれなかった。・・・略・・・
病気に関してもそうでした。天皇が脚気を患った際のことです。侍医たちが再発予防のためには転地療法が一番といい、それを受けて岩倉具視も天皇に、空気の良い場所に離宮をつくっては、とすすめます。しかし彼は、脚気は国民だれもが罹り得る病気だ、私一人なら転地療法も可能だろうが国民全てがそうするわけにはいかない、だから他の予防策を考えよ、というのです。
・・・略・・・
日清戦争のころ明治天皇は広島の大本営に行きました。・・・非常に粗末な木造二階建ての家に明治天皇は住んでいました。一つの部屋を夜は寝室、昼はベッドを片付け執務室にし、食事もここで摂っていました。東京から持っていった机、椅子など以外に家具はありません。壁を飾っているのは八角時計のみ。あまりに殺風景なので、誰かが壁に何かかけてもよろしいでしょうか、と訊くと、明治天皇は、「第一線にいる軍人たちには絵がない」と断りました。
安楽椅子や、冬には暖炉を勧めても同じです。建物の増築が提案されたこともありましたが、自分が楽をするための増築は望まない。軍服を新調してはとの声にも裏につぎはぎすることを選ぶなど、戦っている兵士の苦労を思ったら不便などない、という考えでした。すべては兵たちと共にあることを考えてのことです。
・・・略・・・
明治天皇は晩年、必ず陸海軍の大学、東京帝国大学の卒業式に出席しています。そのころには階段の昇り降りもつらくなり、軍刀を杖がわりに使いました。出席したからといってなにかあるわけではありません。しかし、彼がいたために、卒業生はこれは大変な一日だ、と考えたことでしょう。自分たちが学んだことは決してつまらない使い方をしてはいけない、という責任感を持つようになりました。
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また明治四十五年、つまり崩御することになる年の秋の演習統監が計画されたとき、明治天皇はすでに病気でした。最近の健康の衰えに配慮して、一日だけ川越大本営に泊まり、残りの二晩は皇居で過ごす計画がたてられた。ところが、その計画を見た天皇はなかなか承知しません。軍人たちが早く裁可なさってくださいと頼むと、「どうして私だけが宮城内に帰れるか、兵たちは帰れないでしょう、私だけが帰るのはよくない」。結果的に三晩ともテントの中で過ごすよう改められました。
・・・略・・・
最近のある学者は、巡幸の目的は民を脅かすことだったと言っています。つまり天皇はどんなに強いか、あるいは天皇はいつも国民を見ているから注意しなさい、と知らせることだったというのです。
しかし、そうでしょうか。明治天皇の巡幸は、他国の王のものとは全然違います。たとえばフランスのルイ十四世もフランス国内を巡幸しましたが、いたるところで権力の象徴として、彼の乗馬姿の銅像が作られました。さらにはカトリック信仰を擁護する姿や、戦争を勝利に導いたルイ十四世を飾り立てて描いた絵画もあるし、よきイメージを国民にもたせるために作られた音楽、戯曲まである。
一方の明治天皇は亡くなるまで、一度も銅像を作らせませんでした。他の皇族の銅像は上野公園などにありますけれども、明治天皇のものはない。これは世界的に見ても不思議です。
お札にも明治天皇の顔は登場しない。金貨とか銀貨とかにも天皇の顔は見えません。切手にもない。自分を人に見せようといった、そういう意思はほとんどありませんでした。ヨーロッパの王様とはきわめて対照的です。
明治天皇に対する日本国民の尊敬の念は、ルイ十四世のような故意に美化された理想像から生じたものではありません。彼の長い治世の間に自然と培われた感情なのです。
引用おわり
私は、日本皇室の伝統は、ドナルド・キーン氏がここに述べた明治天皇に受け継がれている精神にあると考えています。ヨーロッパや中国などの皇帝とは異質のものです。ですから真に天皇を表す言葉は、外国にはありません。エンペラーとしか表現されないために、さまざまな誤解が生じるのも無理の無いことですね。
タイの現国王プミポンさんは明治天皇を彷彿とさせるお方ですね。国情が違うのでタイの場合は国民の方からプミポン国宝の肖像画などをばんばん飾りたてますけど。
日本の天皇を平民に引き摺り下ろしてから日本はおかしくなり始めました。そろそろ天罰が・・・。失礼致します。
これはもう戦中戦後派にはGHQの悪影響が、現代の若者には日教組教育の悪影響が。迅速な教育改革が望まれますが、今の状態では希望薄かな。
カピタンさん
今の日本は、明治の実績がありますから、そのいいところを復活させればいいと思いますね。何も新しいことをする必要もないでしょう。