2007年10月20日

満州に居直るソ連

米英が持て余すソ連の横車

 今回は「徳富蘇峰終戦後日記2」をご紹介しています。以前にご紹介した「徳富蘇峰終戦後日記」の続編で、「頑蘇夢物語」続編として06年12月の発行となっています。
最後の解説には、「・・・蘇峰が神経質に反発したのが黄禍論だった。彼が警戒したのは、「亜細亜的」という「概括的名称」によって、日本が中国などのアジア諸国と同一視されることだった。・・・日本が朝鮮や中国と同じカテゴリーで理解されることは、日本の国際的地位にとって決定的なマイナスになる。この認識は福沢諭吉の「脱亜論」以来のものである。・・・この考え方をもっとも忠実に継承したのが蘇峰だった」とあります。
写真は瓦礫の中に建つ国会議事堂
ganso04.jpg

引用開始
(昭和21年2月26日午後)
 本日の新聞を見れば、左の如き記事がある。マッカーサー元帥がソ連大使館に赴き、赤軍第二十八回創立記念祝賀会に出席し、盃を挙げて、米ソ両軍間の親交は、アメリカ独立以来のものであると強調したと書いてある。
・・・・これを見ても、いかに米国が、ソ連の機嫌気褄を取りつつあることの片鱗が窺われる。我等の眼中から見れば、米国は望月の欠くることなき世界第一の覇主であると思わるるが、その米国の上に、また一の苦手があるは、まことに不思議の運命といわねばならぬ。
 今日世界に於て横車を押し通すものは、何といってもソ連である。ソ連には支那はもとより、英国も否な米国もほとほと持て余している。さりとて思い切って、ソ連の鼻を挫く程の手を打つ事を敢えてせず、いわば腫れ物を扱う如く、驕児を賺すが如く、手段の限りを尽くしている状態は、笑止千万であるが、我等にとっては、些か痛快の感なきあたわずである。
 ギリシャ問題、ポーランド問題、トルコ及びイランの問題など、矢継ぎ早に出て来ったが、それらはともかく、けりがついたといわぬまでも、今は中止の姿である。しかし即今最も重大な問題は、何といっても原子爆弾の秘密暴露問題と、満洲不撤兵問題である。この両者はたしかに第三回目の世界戦争を起すに余りある程の申し分がある。
 
 但し今日世界の情勢が、ちょっと戦争には風向きが悪いから、そのために起らずに済むであろうが、少なくともこの二件は、他日に於ける世界戦争の禍根とならぬとは、誰か敢えて保証する者ぞ。原子爆弾の問題は、トルーマンがポツダム会議に持参したる、恐らくは唯一の土産物であったろう。しかしその秘密は、スターリンには勿論、チャーチルにさえも全部は明かさなかった事は確かである。つまりこれはアメリカが独自で持っている虎の子であって、独自で持っている所に、始めて原子爆弾の世界的威力が認知せらるる。
 さればソ連側では,遮二無二これを得たいと考え、その熱度の強きだけ、米国はあらゆる方便、あらゆる口実、あらゆる遁路を考えて、その秘密を今日まで明かさずにいる。
 しかるに思いがけなくも、その秘密がカナダ方面よりソ連側のスパイに盗まれ去ったという事で、カナダでは、昔の芝居によくある通り、お家重代の宝刀を悪党に盗まれた以上の騒ぎをして、その詮索にかかっている。
 ところが盗人猛々しで、ソ連側では、成程カナダ方面で秘密を売りに来たから出先の者が買ったが、その位の秘密は、ソ連では科学研究の結果とっくに発明済みになっている事で、今更何の得るところもなかった。それにも拘らず、この方を秘密泥棒などという言葉で言い分を付けるなどという事は、怪しからぬ次第であると、カナダに向って逆ねじを食わしている。
 カナダというが、その実はお隣りの米国が、その相手であろう。しかるにカナダ方面では、これは国外問題ではなく、カナダ国内の問題であるから、国内の取締上詮索をする訳で、なんら他国に関係のある事ではない。いわばソ連などは、黙って見物していてもよい事で、自ら進んで喧嘩を買って出る必要はないというような事を弁明している。しかし何れかといえば、この問題は必ず将来にも、禍根が残ることと察せらるる。・・・

 次は満洲問題であるが、これは日露戦以前、日本の外務省を騙まし、清国の軍機大臣等を欺ました手を以て、今日は正さしく居直る事となっている。支那が満州を回復したという事は、虚名だけで、その実権は、ほとんど挙げてソ連の手に帰している。これでは支那本国は勿論、米国が全く予想を裏切られた事となった。
 米国の満州に垂涎した事は、日露戦争当時からである。しかるに漸く日本を追い出した結果、かえってソ連を迎えて、満州の一切の利権を、ソ連の手に渡すに於いては、日本人を満州から追い出した事が無効となるのみならず、あるいは更に有害となるかも知れぬ。それに油断の出来ぬ事は、重慶では国民政府と延安の中共政府とが、いよいよ対立をやめて、合同する話が落着したというに拘らず、その共産軍は相変わらず満州にありては、ソ連の軍隊と掎角の勢を成して国民軍を圧迫している。これではとても満州が、国民政府の思惑通りに行くはずはなく、尚更米国の描いていた計画を、裏切りたるものといわねばならぬ。しかしこれらの為に、まさか米国が、ソ連に向って戦を始める事もあるまいが、形勢は頗る険悪といわねばならぬ。
引用終わり
posted by 小楠 at 07:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 書棚の中の国際関係
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