2007年07月19日

ギメの明治日本散策4

 明治初期に来日した二人のフランス人の著書から、彼らの観た、当時の日本及び日本人の姿をご紹介します。
明治九年、フランスの実業家であり、宗教や特に東洋美術に強い関心を持つギメは、宗教事情視察の目的で、画家のレガメと連れ立って来日しました。この本はギメの「東京日光散策」とレガメの「日本素描紀行」が収められています。レガメの挿絵も沢山収録されています。
今回もギメの「東京日光散策」から。
画像はかっぽれの踊り
guimet7.jpg

引用開始
踊りと宴会
 一人は三味線sa-missenを弾く。蛇の皮で飾られた、長くて細いギターで、その耳障りな短い音は、まったく音楽的ではない。控えの三味線弾きは、たえず誤って演奏する。彼女は楽器に合わせて歌うから歌も狂ってくるれのだ。少なくともわれわれにはとらえがたく、その調べは音程が短か過ぎると私には思える。
 他の演奏家は、小さな太鼓[鼓]を鳴らす。左手で肩に支え、右手で打つのだ。太鼓の皮を張っている絹の紐は左手に集められ、打つごとに締めたりゆるめたりする。したがって、音は怒っているあざらしの怒号のように、ほえたり、叫んだりする。
 弱々しそうにみえる娘が、斜めに置いてある太鼓の前の席に着き、うつべき棒を長い間振り上げたままで入る。突然振り下ろして、恐ろしい音を発する。このような激しい音を出す力は、彼女のどこから出てくるのか。芸とたゆまぬ研究、才能と音楽的な感覚とが、こうした結果をもたらすのだ。美しいものだ、音楽は。・・・

 彼女は夢中で、押しつぶされた猫の叫びを発しながら歌う。三味線は活気付き、胸を引き裂くような音を発する一方、小太鼓は最善を尽してほえたてる。
 音が急に止んで気付くのだが、その曲が終ると演奏者に酒を勧めるのが慣習である。酒はこの国のブランデーで、発酵させ蒸留させた米から造られる。
 踊り子が一人やって来た。繊細な目鼻立ちの女の子で、われわれの前にひれ伏し、挨拶の文句を大げさに言う。その文句はたびたび息を吸う歯音で区切られるが、それは敬意のしるしである。吸えば吸うほど礼儀正しいのだ。
 オーケストラが再び楽器の調子を合わせる。踊り子は立ちあがり、ポーズをとる。彼女が演じるのは劇の踊りであり、日本の古いデッサンにみられる持って回った姿勢がその挙動の中に見出せる。彼女は無言劇の中で、顔の表情を変えない。身振りだけの魂のない冷たい哀歌なのだ。・・・

 三番目の料理は生の鯛taiの切身。鯛は赤い大きな魚で恵比寿さまYebisとともによく描かれている。これは上等な食べ物であり――焼かれればの話だが――、しいらに似ているが、味ははるかにいい。 鯛の切身は淡いばら色で、白でデッサンを施した青い皿に盛られ、クリスタルガラスの小さな格子の上に置かれている。格子の下には濃い月桂樹の葉が一枚敷かれている。そして、この料理を調和のとれた完璧なものにするために、青リンゴ色のはつか大根のピュレが少しそえられ、月桂樹の葉と濃淡の差はあるが一つの色となり、青と緑とピンクの色が調和をとって飾りつけられている。この皿と一緒に、赤と金色の九谷Koutaniの磁器の碗が持ってこられる。その中には有名な日本のソース(しょうゆshoio)が注がれていた。箸でつまんでは魚の切身をこの碗の中に浸すのだ。これこそ日本人の大好物であり、そして典型的な日本の料理[刺身]なのである。

 この時、芸者gueshaが扇子を広げ、非常に風情のあるステップを踏む。ただフェリックス[レガメ]が時々若い娘を止めさせて、その順序を乱す。娘の動きが非常に変化に富んでいるので、芸術家の速い筆も、瞬間の動きを描きとめる時間がないのだ。
 踊り子は灰色の服を着ているが、その下には鮮明な赤の衣装[長襦袢]が透けて見える。袖は長く、帯は深紅色である。扇子は銀の色をしている。
 四番目の料理は、煮た鯛。金色のデッサンが施され、趣味よく花模様が飾りつけられた緑の磁器で出される。煮た鯛を味わっている間に、踊り子はそっと姿を消した。彼女は間もなく新しい衣装で戻って来る。緑がかったグレイの絹の服を着け、白いデッサンの縞の入った赤と青の帯を締めている。背中の帯の真中に、金と黄色の布のすばらしい結びを付けている。はでな同じ布の一種の胸飾りが、服の下の首の周りに見えている。
 彼女は八分の六拍子で活気のあるステップを踏み、踊りながら歌う。これがそのだいたいのメロディ(かっぽれkapori)である。
 しかし、私は節の正確さはまったく保証しない。というのは、われわれの記譜法で日本の音程を表現するのは、不可能に近いからだ。
 この踊りはすばらしい。三味線の弾き手はほとんど正確に演奏しているようにさえ思える。歌い手たちの方は、よくわからぬ言葉を最後まで続けている。

 五番目の料理。濃いブルーの大きな皿の上に、ピンクの小さなうみざりがにが三つ付いた、真白い魚のフライを持ってくる。
 踊りが終るとわれわれはアンコールをした。このような成功には、どうやら慣れていないこの娘にとっては、大いにうれしいことなのだ。だから彼女は、いっそう元気よくとび出し、ステップを踏みながら、ほほえもうとさえする。しかし、どんなに活気付こうと、彼女は決して跳び上がらない。魅力は、とりわけいつも調和のとれた姿態の中にあり、それは衣服の長いひだのおかげなのだ。短い服で踊ったら、たぶんだめであろう。
 六番目の料理。われわれが食い尽くした異様な食物の消化を助けるために、炊いた米を何杯か食べて、重力の法則を利用する。炊いた米は,発酵させ、塩漬けされた数切れのきゅうりによって味を引き立てられる。
 ところで、信じられないだろうが、われわれは、箸の操作にかなりの進歩をみたので、小さな棒で多少とも器用にとらえられた米は、ある程度の速さをもって姿を消すのだ。
引用終り
posted by 小楠 at 07:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 外国人の見た日本B
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