2007年07月10日

支那事変海軍従軍記者電

長谷川司令長官声明

 昭和十二年十二月十八日発刊の、「各社特派員決死の筆陣『支那事変戦史』」という本があります。約750ページにもなる分厚い本ですが、昭和十二年七月の盧溝橋事件から十月末の上海事変ころまでの特電を集めたもので、当時の事件が生々しく伝わってきます。日本軍を執拗に挑発し、和平を阻害する裏には、ソ連と中国共産党の策謀そしてアメリカの蒋介石援助があることは周知の通りです。
では、事件毎に一部を抜き出して引用してみましょう。時は昭和十二年のことです。
写真は戦跡視察の長谷川司令長官
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引用開始
【上海十四日(八月)発同盟】
 長谷川第三艦隊司令長官は本日午後次の重大声明を発表した。
 支那軍隊の挑戦的攻撃をうけたる我が第三艦隊は自衛のため必要とする処置を執るの已むなきに至れり、仍って支那軍隊の占拠する地域及びその軍用施設付近にある一般住民は直ちに右以外の適当なる地に転居せんことを勧告す。
昭和十二年八月十四日
長谷川第三艦隊司令長官

【上海十五日発同盟】
 (海軍武官室午後六時半発表)

(一)十五日午前十時わが海上航空部隊は銀翼数十機を連ね杭州を空襲、壮絶なる空中戦を演じ敵の戦闘機約十機を撃破し地上飛行機全部を撃破せり。
(一)正午ごろ海軍○○空襲部隊は猛烈なる悪天候を冒し暴風雨中の南昌を空襲し重爆弾数十個を投下、折柄地上に待機中の敵機数十機を撃破、何れも無事帰還せり。
(一)午後わが海軍○○空襲部隊は敵の首都南京の飛行場を空襲し多大の損害を与えた。敵は無電台を通じてSOSを発し各地に応援を求めていたが、情報によれば蒋介石は周章狼狽し首脳部と謀議中と伝えらる。なおわが飛行機は全部帰還(東日十五日号外)

首都南京を震撼し大空中戦展開
【上海十五日発同盟】

 十五日午後荒天の支那海を翔破し来った海軍航空隊により敢行された南京飛行場襲撃は壮絶を極めたもので、雲低く垂れた南京上空に爆音勇しく銀翼を連ねた海軍機が紫金山をかすめて現れた時は、南京全市を震撼せしめ、市内外に装置された高射砲、高射機関銃は一斉に火蓋を切られ、轟々たる砲声は我飛行機より投下する爆弾炸裂の轟音と相俟って首都南京の天地に轟き渡った。我空襲隊は約一千四百メートルの高度を保ちつつ見事に機翼を連ねて前後三回に亘り故宮飛行場、光華門外軍用飛行場格納庫及び多数の飛行機を完全に爆破し、数機は家屋の屋根をすれすれに低空飛行を敢行したとのことである。かくて応援にかけつけた支那軍飛行機約十台と壮烈な空中戦を演じ、その大半を墜落せしめた後、悠々長距離を翔破、我海軍空軍の偉力を思う存分発揮して無事根拠地に帰還。我戦史上空前の貴重な記録を印した。

空襲下の旗艦に司令長官と語る
上海十七日発・朝日特派員 西島芳二

 記者(西島特派員)は海軍従軍記者として特に海軍当局の許可を得、第三艦隊の麾下に従軍することとなり、十七日午前五時に到着した。この日は曇天時々横殴りの風に雨を加え陰鬱な光景を呈している。案ぜられた呉淞砲台附近は十七日午前二時全部消灯厳戒裡に通過したが、幸い機関銃、小銃五六十発の洗礼を受けただけで済んだ。時々陸戦隊のぶっ放す殷々たる砲声の合間に我が飛行機が飛来し無気味な重苦しい空気の漂う中に物見高い支那人達はガーデン・ブリッジの上から共同租界の英米始め各国大使館、銀行等の前に群り集まって、我が軍艦の動静を窺っている。

 記者は早速旗艦○○に事変勃発以来中南支の帝国居留民保護のために日夜辛苦を重ねつつあり、今又第二上海事変の帝国海軍の全責任を担い奮闘しつつある長谷川司令長官を訪問した。司令長官は日頃と変らぬ温容の中に月余の苦悩を漂わせつつも記者を快く○○のサロンへ招じ入れた。

記者:長官のご心労は察するに余りあります。さぞ支那軍の執拗な不法行為に我慢に我慢させられたことでしょうね。
長官:今度の事件は全然支那側の挑発に依ったものである。自分は飽迄帝国の不拡大方針を堅持しようとし陸戦隊と小競合いをやってもなるたけ穏便に済ませようと考えていた。然し陸戦隊本部や海軍武官室の上に爆弾を投下するに至っては、断じて我慢が出来ない。

記者:十六日あたり支那軍の空爆は相当猛烈で○○なんか真先に狙われたそうですね。
長官:十四、十五両日は丁度支那側に取ってはもっけの台風のため我方の飛行機が待機している間にやって来た。奴には癪にさわったよ、十六日なんかも○○の側から三十米のところへ一直線に落して行った。○○は今迄合計十二発の爆弾を受けたがまだ一発も中らない。支那の飛行士の手腕なんか知れたものだが、密雲の中を潜るようにして飛んで来るのを見ると、搭乗者はどうも支那人だけじゃないような気がする。

記者:今度は支那も中々油断が出来ないようですね。
長官:前の上海事変で苦い経験を舐めているだけ、中々周到に準備しているようだ。飛行機なんかもぶっ潰す後から後から他に根拠地を拵えてやって来るらしい。毎日敵がやって来るので片っ端から落してやっている。

記者:上海は北支と違って随分やり難いらしいですね。
長官:それはそうだ、陸戦隊が苦しんでいるのもそこに原因がある。共同租界と地続きが直ぐ敵の陣となっている。夜なんかも外国の軍艦は煌々と燈火をつけている。昨夜もその軍艦の背後に隠れ高速度のランチに魚形水雷を載せて走って来た、幸いに被害はなかったが中々手に負えない。最もやり難い戦いだから将兵共に辛苦を舐めている。我が陸戦隊は勇敢であるし、帝国政府も愈々本腰を入れてかかるようだから、万間違いはあるまい。国民諸君もよくこの上海事変の性質を知って応援して欲しい。

かく長官が語り終るや否やバリバリと物凄い機銃○○砲の音が我等の頭上に轟き、慣れない記者が慌てて立上がると『何時も今頃やってくるのだ』と長官はきっとして上空を睨み上げたまま口をつぐんだ。
引用終わり
posted by 小楠 at 07:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 書棚の中の支那事変
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