2007年05月29日

米国製憲法強要事情8

最高機密の憲法改正草案作成

 児島襄著「史録 日本国憲法」をご紹介しています。奥付には昭和四十七年第一刷、昭和五十年第六刷となっています。
この本の最後の部分に、著者は『どのような憲法論議を進めるにあたっても、先ずは「日本国憲法」の成立の事情を明らかにすることが、出発点と思われる』と書いています。
今回の引用は、米国製憲法草案作成には、GHQ民生局員が動員され、すべて最高機密扱いで行われ、日本政府が作成したものを承認すると見せかけるようにして発表する準備の部分です。

引用開始
 ケーディス大佐はホイットニー准将の部屋を訪ね、次のような憲法改正草案分担表を提出した。(分担表は省略します)
 すなわち、二十五人の民生局員のうち、朝鮮課四人を除く二十一人が動員され、四人(秘書、通訳)が加えられている。
 ホイットニー准将は、リストをいちべつすると、直ちに二十五人を会議室に招集した。准将は、十一の陸軍将校、四人の海軍士官、四人の軍属、六人の女性が席につくと、立ちあがった。・・・・
 准将は、淑女ならびに紳士の皆さま、と合いの手をいれながら、「マッカーサー・ノート」を読みあげた。意外な内容に、一同の間にざわめきが起った。しかし、准将はいさい構わず、なおも朗々としゃべりつづけた。
「私は、二月十二日までに、民生局の草案が完成し最高司令官の承認をうけることを、希望する。二月十二日に、私は日本の外務大臣その他の係官と、日本側の憲法草案についてオフ・ザ・レコードの会合を開くことになっている」

 ホイットニー准将は、おそらくその日本側草案は保守性の強いものだろうが、自分は、それでは天皇を守ることはできない、はっきりと進歩的なものでなければだめだ、ということを納得させるつもりだ、といった。
「私は、説得を通じてこういう結論に達したいと希望しているが、説得の道が不可能なときには、力を使用すると伝えるだけではなく、力を使用する権限を最高司令官から与えられている」・・・・
「われわれのねらいは、日本の外務大臣とそのグループが、彼らの憲法の針路を変え、われわれが望むリベラルな憲法を制定させることにある。そのあと、日本側ができあがった文書を最高司令官に提出してその承認を求めれば、最高司令官はその憲法を日本人が作ったものとして認め、日本人ガ作ったものとして全世界に公表するであろう」・・・・

 話題は、もっぱら「マッカーサー・ノート」第二項、戦争と軍備の放棄に酋長した。・・・・
 主な疑問点は次のようなものである。
――戦争の放棄と廃止とは、別問題のはずである。戦争はやりたくなければやらなくてもいい。しかし、国家が武装を放棄するのは、外敵の侵略にも抵抗しない、いいかえれば独立の放棄に通ずるのではないか。
――世界各国の憲法を見渡してみて、このような“平和条項”をそなえている憲法は、ない。なぜないかといえば、それは国際社会の実状に矛盾する。つまり、国家の安全と軍備とは、現在の国際社会秩序では、まだ切り離すことはできないからである。結局は、この“平和条項”は、やがて日本が独立国家の地位を回復した場合、かえって邪魔になるのではなのか。・・・・・・

 二月七日、ホイットニー准将は、上機嫌で出勤した。憲法案作成作業は、予想以上に迅速かつ順調に進んでいる。秘密保持も、万全である。日本側はしきりに情報収集に努めているが、前日からは、民生局のドアにかぎをかけ、メンバーはトイレ通いと出退勤以外は、部屋を出ない体制をとった。日本側には、作業の内容はむろんのこと、作業をしていること自体も察知されていないはずである。
 作業は、総司令部内、とくにジョージ・アチソン顧問たち、国務省の連中にも秘密にした。国務省派の誰かが、天皇が主権者であるかどうかは連合国にとってはどちらでもよいことだ、と松本国務相に告げた、という情報を耳にしたからである。
 国務省派しめ出しと秘密確保の状況については、前日、マッカーサー元帥に手紙で報告しておいたが、国務省を嫌い秘密を好む元帥は、満足しているはずである。

 さらに、昨日は、日本政府から憲法改正案をきょう(十二日)届ける、と連絡してきた。
 内容は、二月一日の『毎日新聞』が伝えた草案と大差なく、陸海軍の規定が含まれている、という。そして、この陸海軍の規定については、政府の内部で意見が対立している、という。
 一部の閣僚は、連合国から疑惑視されるのを避けるために、陸海軍規定は削除すべきだと主張し、松本国務相ら別の閣僚グループは、独立国に軍隊は不可欠であり、もし日本が独立国でないならば憲法も不要だ、との意見だ、という。

 「すべては、うまくいっている。理想的とさえ、いえる。そうじゃないか、チヤールス」と、ホイットニー准将は、眼を輝やかせてケーディス大佐に、いった。
 准将の観察では、憲法改正についての日本政府内の分裂は、好ましい。どんな改正案にせよ、日本政府の思想と態度が強固に一致していては、総司令部案を承知させるのに手間がかかるからである。が、分裂しているならば、たとえ理想にすぎるとみえる改正案でも、松本案に反対するために支持する閣僚が期待できるであろう。
 ホイットニー准将は、前日、マッカーサー元帥あての報告の中で、「われわれの憲法改正原案」は、週末までには元帥の手もとに提出できる見込みであり、「この原案は満足すべきもの」になるだろう、と言明していたが、おそらく、リンカーン誕生日に提示、ワシントン誕生日に確定、という予定計画の達成も確実視される。
「マツモト案が届いたら、ジェネラルに提出するコメント(論評)を準備してくれ。もっとも、内容も当方の結論もわかっているようなものだが・・・」
 ホイットニー准将は、明るい笑顔でケーディス大佐に指示した。
引用終り
posted by 小楠 at 07:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 米国製憲法強要事情
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