2007年05月26日

米国製憲法強要事情6

米国製新憲法案を受諾させる準備

 児島襄著「史録 日本国憲法」をご紹介しています。奥付には昭和四十七年第一刷、昭和五十年第六刷となっています。
 この本の最後の部分に、著者は『どのような憲法論議を進めるにあたっても、先ずは「日本国憲法」の成立の事情を明らかにすることが、出発点と思われる』と書いています。
 今回の引用は、憲法改正を日本の意思にまかせるのではなく、GHQ民生局が憲法案を作り、それを受諾させる方向に走り出した部分です。
写真は松本国務相
matsumoto.gif

引用開始
 昭和二十一年二月一日。
 松本国務相は、朝食前の習慣になっている新聞各紙の閲読をはじめたが、『毎日新聞』をとりあげたとたん、眼をむいた。一面トップに「憲法改正調査会の試案」と白抜きの見出しがかかげられ、「立憲君主主義を確立、国民に勤労の権利義務」の副見出しとともに、一面のほとんど全部をつぶして第一条から第七十六条までの「試案」が報道されている。・・・
 ところで、『毎日新聞』のスクープは、当然に総司令部側の関心を刺激した。
 記事の仮訳が作成されて民生局にとどけられたのは午後四時ごろであったが、午後五時すぎ、ハッシー海軍中佐は楢橋書記官長に電話して、『毎日新聞』のスクープ案が政府の憲法改正案かと質問し、ちがう、という返事を聞くと、書記官長に告げた。
「では、すぐ政府案をみせてもらいたい。もちろん、正式の提示はあとでいい。それから、そちらの仕事はできるだけ急いだほうがよいと、ご忠告する」

 届けられたのは、いわゆる甲案の概要を述べた「憲法改正の要旨」と「政府起草の憲法改正に関する一般的説明」であるが、通読して、ホイットニー准将とケーディス大佐はうなずきあった。・・・・
 ホイットニー准将は、これで日本側としては、あらためて「ポツダム宣言に忠実に従ったより純粋の憲法改正案」をつくるか、それとも「われわれの憲法」を受諾するか、どちらかの道を選ばざるを得なくなった、と指摘した。
「そこで、われわれのほうだが、私はジェネラル(マッカーサー元帥)の権限を明らかにした覚書と、『毎日新聞』案とをジェネラルに届けるが、われわれは既定方針どうり、マツモトのように改正項目を示すのではなく、新しい憲法案をつくって示すべきだと思う。そうすれば、日本政府は、われわれがどんな種類の憲法に関心を持っているか、明白に諒解できるだろう」

 准将は、その作業のためにはどのくらいの日数が必要か、とケーディス大佐にたずねた。
「作業はすでに各部門ごとに開始しています。一応は、マツモトと同様に明治憲法を訂正する形ですすめていますが、問題は、憲法改正についての絶対に譲れぬ基本点です。これがはっきりすれば、作業はぐんと容易になります」
「それは・・・ジェネラルに相談して早急に処理するが、それで何日ぐらいかかる?」
「たぶん、二月末までには完全にできると思いますが」
「ノー、それではおそすぎる

 ホイットニー准将は、首を大きく左右にふった。准将は、前日に伝えられたワシントンからの『AP』電を指摘した。米国務省筋の談話として、「日本管理理事会が二月十四日ごろワシントンで開かれ、その後数日以内に極東委員会が発足することになろう」という。
 だから、「二月末ではおそすぎる、二月中旬までが好ましい」と、ホイットニー准将はいった。・・・・
ケーディス大佐は肩をすくめて、敬礼した。元帥の希望、すなわち即時実行の命令にほかならない。
 大佐は准将の部屋を出ると、自室にハッシー海軍中佐、M・ラウェル陸軍中佐を呼んだ。二人とも、大佐と同じく弁護士であり、三人で憲法草案作成の全般を統轄する「運営委員会」を構成する。
 大佐は、二月中旬までというホイットニー准将、いやマッカーサー元帥の希望を伝え、そのためには「第一次草案は一週間以内につくらないとまにあうまい」と、述べた。

翌日、二月二日朝。
外務省からホイットニー准将に電話連絡があった。
前日、吉田外相は、二月五日火曜日に外相官邸で憲法改正についての非公式会談を申し入れてきたが、二日間延期して七日木曜日にしてほしい、というのである。
 ホイットニー准将は、いや、いっそ一週間延期して二月十二日の火曜日にしましょう。と答えた。前夜、ケーディス大佐との会話のあと、マッカーサー元帥に会うと、元帥は例によって准将の判断を「ファイン」と承認し、准将の提案どおりに、フル回転で憲法草案を作成するよう指示した。
 このような事情なので、ホイットニー准将としては、吉田外相の会談延期申し入れは、日本側の改正案再検討のためと推測するとともに、自分のほうの作業の進展を考え、一週間の延期を反対提案したのである。

 だが、もちろん、日本側はなにも知らず、松本委員会はこの日、午前十時から第七回総会を開いて審議した。・・・・
 総会は委員会全員が出席し、甲、乙両案および松本国務相の「憲法改正私案」が配布された。松本国務相は、「私案」を主体、乙案を参考にして審議したいと述べ、午前中は松本国務相の「私案」説明、午後に各条項についての審議が行われた。
そして論議の焦点はいぜんとして天皇と軍隊とにしぼられた。
引用終り
posted by 小楠 at 07:39| Comment(2) | TrackBack(1) | 米国製憲法強要事情
この記事へのコメント
この辺りの経緯や前回の公職追放例の実際を知ると、日本は弄ばれているとしか思えませんね。当時の政治家たちは、程度の違いはあっても皆屈辱を感じていたのではないでしょうか。現行憲法を宝物のように後生大事にしたがる人たちは、こうした経緯を知っているのでしょうか?
Posted by milesta at 2007年05月27日 20:41
milesta 様
>>日本は弄ばれているとしか思えませんね

全く仰る通りです。占領国の法律に手をつけること自体も国際法違反ですが、まだ当時は植民地思想とか、アジア人蔑視の風潮も影響していたのでしょうか。
とにかく、今の憲法はまず廃棄すべきものでしょう。
Posted by 小楠 at 2007年05月28日 08:07
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