2007年05月24日

米国製憲法強要事情4

共産党の新憲法案骨子

 児島襄著「史録 日本国憲法」をご紹介しています。奥付には昭和四十七年第一刷、昭和五十年第六刷となっています。
 この本の最後の部分に、著者は『どのような憲法論議を進めるにあたっても、先ずは「日本国憲法」の成立の事情を明らかにすることが、出発点と思われる』と書いています。
 今回の引用は、当時人気のあった共産党の発表した憲法案と総司令部の態度、そして、「ラウェル文書」で有名なラウェル少佐の提案などの部分です。
写真はホイットニー准将
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引用開始
 牛場友彦が明治生命ビルに呼ばれた十二日(昭和二十年十一月)の朝刊各紙には、次のような共産党の「新憲法案骨子」が発表されていた。
一、主権は人民にある。
二、民主議会は主権を管理する・・・。
三、政府は民主議会に責任を負う・・・。
四、民主議会の議員は人民に責任を負う・・・。
五、人民は政治的、経済的、社会的に自由であり、かつ議会および政府を監視し、批判する自由を確保する。
六、人民の生活権、労働権、教育される権利を具体的設備をもって保証する。
七、階級的ならびに民族的差別の根本的撤廃。

 現憲法に照合するとき、格別に瞠目すべき内容ともいえぬが、当時としては、まさに“革命的”発案である。しかも、この「新憲法案骨子」は、天皇制打倒人民共和政治樹立などを唱う「人民戦線綱領」と不可分の形で主張されている。
 当時共産党は過去の汚れを持たぬ政党として、人気があった。マッカーサー総司令部も、庇護といわぬまでも、共産党の存在を旧体制解体ムードの促進剤として是認する態度を示した。この総司令部の姿勢と思いあわせるとき、近衛公爵には少なからぬ脅威が感じられた。公爵は細川護貞に、いった。
マッカーサー司令部にはユダヤ人多き為か、皇室に少しも好意を持たざるのみか、口実を設けて破壊せんとしつつある様なり。又、赤化も計り居る如し」
 反共を国是とする米国が、日本の赤化を望んでいるとは思えない。しかし、マッカーサー総司令部内に、共産主義者、それに近い急進的理想主義者、あるいは日本の国情に無知な政策決定者がいて、共産党も民意のあらわれとみる結果“赤い憲法”の誕生をうながしているのではないか。・・・・

 第八十九議会では、戦争責任問題のほかに、天皇制、憲法改正も重要な論点としてとりあげられた。もっとも、質疑の潮流は、どちらかといえば保守的なものをうかがわせた。たとえば、斉藤隆夫議員は、
「如何に憲法を改正するとも、之に依って我が国の国体を侵すことはできない。統治権の主体に指をふるることは許されない」といえば、自由党鳩山一郎議員も、次のように、強調した。
「わが日本において、天皇が統治し給うということは、国民の血肉となっている信念である。しかも、天皇は民の心をもって政治をされる民主的存在である・・・民主政治には、日本的という限界がなければならぬと思う
 同じく自由党の北?ヤ吉議員も、日本的民主主義とは「君民同治」あるいは「君民共治」主義であろう、といい、幣原首相は、皇室中心の体制は動かし得べくもない、とうなずいたあと、憲法改正についても、次のような方針を指摘した。

「(運用で時勢の進運に応じ得ると思うが)、もし、憲法の若干の条規を改正することによって、将来の疑義を閉ざし、濫用のおそれをたち、国運の伸張に貢献し得らるるものがあると認める場合には、この際、かかる方向に歩を進めることが望ましいと考えている」
 すでに松本委員会は、憲法の全条項の検討を終え、各委員は改正私案の作成にとりかかっている。
 作業は極秘にされている。くわしい内容は発表できないにしても、幣原首相の言明は、憲法改正の方向がひどく消極的であることを、示唆していた。・・・・

 ホイットニー准将とケーディス大佐は、民生局法規課長マイロ・ラウェル少佐から、「レポート・日本の憲法についての準備的研究と提案」と題するマッカーサー元帥あて報告書をうけとった。
 この報告書は、ラウェル少佐が大日本帝国憲法を検討し、日本民主化のための憲法改正には、とくにどのような点に留意すべきかを、列挙したものであった。・・・
 内容は天皇の権限の縮小、市民の人権を保障した権利章典の明記、議会政治の確立と憲法外の機関の禁止、地方分権制の確立を主項目としているが、のちに日本国憲法の柱となった国民主権、軍備放棄は、いずれも主張されていない

 ケーディス大佐およびフランク・リゾー大尉によれば、ラウェル報告書は、主として松本委員会から届けられる議事要録と、委員会に所属する“自由主義的憲法学者”(註、野村淳治博士らしいといわれる)の意見と、すでに民生局要員には「なじみになっていた」(リゾー大尉)SWNCC228指令とを照らしあわせて、作案したものである。
 したがって、憲法が国家の最高法規であることの明確な宣明、国政の憲法による厳重な規制、基本的人権とくに司法上の人権の具体的保護、地方自治制度を強調する一方、天皇制と軍隊は、その存続を前提にしている。
 天皇については、御前会議、内大臣、枢密院など、いわば政府外の側近政治を排除する必要があるとし、「天皇に直接上奏しうるのは、国民に直接責任を負う地位にある若干の官吏に限るべきである」と述べている。
 つまり、どちらかといえば、ラウェル少佐の改正は、政治的に重大効果をおよぼす部門はさけ、主として法律処理が可能な面に焦点をおいている、といえる。

 この点は、弁護士出身であるラウェル少佐らしい作文であるが、ホイットニー准将も弁護士出身である。
「だいたい、こんなところを土台にして検討をすすめるべきだろうな、チヤールス」
 ケーディス大佐も、ホイットニー准将の意見に賛成した。とくにラウェル少佐の報告書に感銘をうけたわけではなく、「本来、憲法問題は日本側に主導権を与えるべきであり、日本側の手にあまると見定めたときは、われわれがのりだすが、いまはまだその段階ではない」と判定されたからである。
引用終り
posted by 小楠 at 08:01| Comment(2) | TrackBack(1) | 米国製憲法強要事情
この記事へのコメント
>当時共産党は過去の汚れを持たぬ政党として、人気があった

そしてGHQにも共産主義に極めて近い人たちが揃っていたことが、戦後日本に影響を与え、今でもその亡霊が徘徊していますね。
Posted by milesta at 2007年05月24日 08:41
milesta 様
アメリカなら絶対に制定しないような憲法を、よくもまあ押し付けてくれたものです。
>>今でもその亡霊が徘徊していますね
これが日本の病巣ですね、日本を顚覆させるのが目的ならば、彼らに日本の防衛意識は無いでしょう。
これらの駆除が最大の課題ですね。
Posted by 小楠 at 2007年05月24日 18:22
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