2007年04月25日

大戦直前日本の世情3

蒋介石目覚めよ

 大東亜戦争直前、昭和十六年頃の世界情勢の渦中に生きた日本人が、どのようなことを考え、どのような意見を持っていたのかを、その頃に発行された書籍を紐解くことによって、その時代の日本人と同化し、なぜ大戦へと進んでいったのかを探って見たいと思います。
当時多くのベストセラーを出した、武藤貞一の著
「日米十年戦争」(昭和十六年発行)
から少し引用しています。
 またこのくだりは、当時の日本の敵はソ連と支那の共産党であって、決して蒋介石の国民政府だとは思っていなかったこともうかがわれますが、西安事件以来、蒋介石は共産党と共に抗日を余儀なくされていたこともあり、日本のいらだたしい思いが表れています。
写真は米国女性の長槍部隊
nagayari.jpg

引用開始
 ソ連は日本がこのまま支那大陸の戦争を継続すればするほど、また日本が資源不足で南進政策を積極化すればするほど、おのずから魚夫の利を占め、懐手空腕、よく支那大陸を総舐めにすることができるとずるく考えている。
 蒋介石の勢力減退に反比例して、支那大陸の奥地に隆々たる勢力を培養し、かつ君臨しつつあるものは共産党および共産軍だ。いな、逞しき赤色勢力だ。蒋介石は日本に叩かれて、再起不能に陥っても、あとの支那大陸奥地には赤色勢力の氾濫を如何ともすべかせざるに至ろう。
 
 日本はだれが何と言っても防共のトーチカであり、日本と言うトーチカがその機能を発揮し得ざるに至れば、支那大陸は、アジア大陸は、もはや堰の取れた河原である。
 蒋介石は不当に支那民衆を駆り立て、抗日戦争に専念することによって、彼はソ連の為にマンマと日本を疲労させる道具にされてしまい、身自らも今日では部内の赤色勢力に押され、中共側の攻勢にややもすればたじろいでいる形である。
 蒋介石は、最近だれかに、日支が共倒れになってしまえばあとはアジア全体の壊滅だという意味のことを語ったとのことだが、かれにして既にその認識ある限り、何故一足飛びに従来の方針の大誤謬を訂正する勇気を出さぬのか。
 今や日華条約の締結によって、支那事変は、汪政権との間には終結を告げ、なお残る蒋政権に対しては更にこれからというところだが、戦争は何時まで経っても『これから』であってはならない。
 大軍は永く用うべからず、大軍を永く広野に晒せばその国乱るとは古書の金言だ。支那のため、アジア全国の福祉のため、敢えて蒋介石の猛省を促さざるを得ない。記せよ、闘いの勝負は既に決しているのである。面目などに囚われて、国乱れ、国亡ぶるを何とするや。

汪蒋合作を望む
 汪精衛氏が日支和平のために廷身重慶を脱出し、爾来今日に至るまで相当の光陰が流れた。汪氏としてもその行路に決して薔薇の花が撒かれなかったことを回顧するであろう。
 わが国民としても汪氏に対する期待が全幅的に酬いられたとは考えられない。
 しかしながら、今更いうまでもなく、汪氏は支那の要人であって、日本の要人ではないのである。汪氏の愛国心が熾烈であればあるほど、かれは祖国支那のために図らざるを得ない。
 そうした関係を厳正公平に見て、汪氏の和平運動に払った今日までの努力は十分に買ってやらなければならぬものと思う。
 現下、汪の国民政府はもちろん蒋介石の重慶政府とは別個の存在だ。一は和平を振りかざし、一は焦土抗戦を固執しているから、その立場は全く反対である。しかも汪政権は再建未だ途上にあり、大陸各地に武力を擁する蒋介石政権に比し、なおその実勢力において遺憾の点なきを得ないのだ。

 して見れば、汪氏は今後の和平目的貫徹のために、むしろ蒋政権と合作し、これを傘下に収めることに向って最善の努力を傾注すべきであろう。
 この意味で、われらは汪氏が重慶政府と全然別個の存在たらんよりも、むしろ百尺竿頭一歩を進めて、重慶政府の要人たちを抱擁し連携する立場に立つことを希望せざるを得ない。
 汪氏の任務やいよいよ重大なりというべし。これはひとりわれらの希望のみではない。現に浙江財閥の巨頭中にも、汪、蒋の合作によって一日も早く支那大陸の和平を克復すべしとの熱意を持っているものがあるのである。浙江財閥は多年国民政府の後ろ盾だった関係上、その行蔵は事変解決の上に非常な推進力を持つものであるが、今やかれらの意向が無益なる焦土抗戦より一日も速やかに支那を救出する点に一致しつつありと見られることは、画期的現象といわなければならぬ。

 それらの点については、かつて上海においてわが国の最有力筋の実業家と浙江財閥の指導的地位に在る二大金融巨頭との隔意なき懇談によって明らかに聴取し得られた事実であり、これより推断するも、日支の全局的和平は、既に片輪をレールに乗せたと立派にいえるだろう。
 重慶政府の弱り方の最近特に著しきは何人の目にも映ずる点だ。かれらが表面的に強がりを示す度合いが高ければ高いだけ、内心の弱味が看破し得られるのであって、この場合、わが方としては、ただ実質通りにこれを評価すればよいのである。何れにしても、今日は汪精衛政権を絶対に支誘掖すべき場合である。先ず汪政権を強力化すれば、道はさらにおのずから展けることが予想せられる。
引用終わり

 民主を標榜するアメリカが、独裁者蒋介石や中国の共産党、そしてソ連共産党を援助するという、全く正反対の政策をとっていたのは、満洲の利権獲得や、列強の植民地防衛の意図であることは明白でしょうが、結果から見ればすべて思いとは逆の世界情勢を現出してしまいました。面白い言葉をご紹介しておきます。
「人は利を見て害を見ず、魚は餌を見て針見ず」
 アメリカがやったことは、この通りではないでしょうか。
posted by 小楠 at 07:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 書棚の中のアメリカ
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