2018年01月18日

コミンテルン32年テーゼ

1932年にコミンテルンが、支部の日本共産党に与えた指令書、方針書から、
日本に於ける情勢と日本共産党の任務に関するテーゼをご紹介します。
国際共産党日本支部 日本共産党中央委員会

 日本帝国主義によって火蓋を切られた強盗戦争は、人民大衆を一の新たなる歴史的危機にー世界虐殺戦の終結以来の最大の危機にー投げ入れつつある。満州の占領、上海及び支那のその他の地方に於ける血腥き諸事件、一般に日本の強盗帝国主義の企てた全軍事行動は、現在の世界経済恐慌の諸関係の下に最大の帝国主義強国の一つによって行われた最初の、広汎な計画を持つ軍事的進出である。開始されたこの帝国主義戦争は、資本主義世界の一般的危機並びに経済恐慌の全深刻さ、世界帝国主義のあらゆる対立の未曾有の先鋭化を反映している。それは最も重要な意味を有する新たな政治的震撼の全時機の端を開いた。最近の日支事変の結果として、異常に複雑化した国際情勢が生まれた。それに関連して、国際共産党の一切の支部、第一に日本の革命的プロレタリアート並びにその共産主義前衛にとつて、最高度に責任ある諸任務が生ずる。

 日本帝国主義の現在の領土拡張戦争は、日本帝国主義の発展の以前の諸段階の総てと直接の関連を持っている。異常な攻撃欲をその特徴とせる強盗的日本帝国主義は、植民地略奪と戦利品とを、資本蓄積と自身の強固化との最も主要な源泉の一つとして来たのである。

 日本が資本主義の軌道に移行せる際に天皇制―反動的な半封建的官僚と大土地所有者とーが勝利したことは、帝国主義列強に対する日本の不平等な地位(高圧的条約)を廃除せんための初期の闘争をば、弱い隣接民族を略奪するための闘争という形態を取らしめ、近代的日本帝国主義の強盗政策のために道を拓く結果となった。

 日本帝国主義は1895年には朝鮮を支那から切り離し、台湾を領得し、支那に3億5千万円の償金を課した。義和団の蜂起の鎮圧に際しては、日本帝国主義はこれをその強盗政策の為に利用しつくした。1904年の戦争の結果ツアールのロシアが南満州で租借していた領土をロシアから奪い去り、南満州鉄道をその掌中に収めた。それに引き続く時期に日本帝国主義は朝鮮を最終的にその植民地となし、アジア大陸に於けるその将来の進出のための前哨に収めた、等々。

 世界大戦時には、日本帝国主義は更に一層の領土拡張をなした。1915年には支那に向って支那を日本の植民地に陥れんとする有名な21か条の要求を提出した。1922年のワシントン会議に於いて、日本帝国主義はアメリカの圧迫の下に、これらの要求の可也の部分を放棄し、山東から撤兵する等々のことを余儀なくされた。しかし日本帝国主義は決してその企図を思い切ることなく、その強盗計画の実現の為に適当な時機を俟つために、その力を集めてきた。

 ブルジョア=地主的日本の増大しゆく征服欲は、間断なく他の帝国主義大国の意図と要求とに衝突した。支那に於いて日本の開始した戦争は、かかる諸対立を一層激化した。太平洋沿岸、就中支那では世界大戦以後世界資本主義の諸対立が特に先鋭化しているが、これらの地方は現在では益々帝国主義的強盗の利害関係の険しい衝突地域となりつつある。支那に於ける戦争は、正にその勃発の最初の日から、新たな世界虐殺戦の迫り来る危険を、日本及びその他の国々の間に於ける(帝国主義列強の総てを網羅するに至らずとするも)直接の軍事的衝突またはかかる衝突の極度の強行的準備の迫り来る危険をかってない程に現実のものとするところの諸勢力を切って離した。

 それと同時に、世界帝国主義の政策にとって顕著な要因をなすものは、現在では、ソビエト同盟に対する戦争のために帝国主義列強の統一戦線を作らんとする企画の強化である。我々はプロレタリア独裁の国に対する世界帝国主義の武力干渉の直接に差し迫れる危険に当面している。この戦争の道具は国際連盟である。ソビエト同盟に対する戦争によって、国際ブルジョアジー及び彼らの代理人たる社会民主主義者は何よりも先ず国際プロレタリアートがその解放のために、恐慌からの革命的活路のために行う闘争を、挫折せしめようとしている。一切の国々に於ける勤労大衆の眼前には二つの世界、一方では腐朽し、死滅しつつある資本主義と、他方では益々堅固になり勝利しつつある社会主義との闘争が開始されている。資本主義のこの上なく激烈な現在の世界恐慌を背景にしてソビエト体制の一切の長所は特に鋭く浮かび上がり、社会主義建設の成果は特に輝かしい光の中に現われている。プロレタリヤ独裁の国の工業化は、未曾有の速度を以って前進しつつある。農業の社会主義的改造と、密集せる共同経営化と、またこれらを基礎として行われつつある階級としての富農の廃除に関しては、非常な大成功が遂げられた。社会主義経済の基礎の建設は完了した。第二次五カ年計画を実現するための諸前提は既に出来上がった。しかもこの計画によって階級なき社会主義社会の建設は充分に確保され、人類の歴史に一の新たな時代の端が開かれるのである。

 現在の経済恐慌によって、大衆的失業と、言語に絶する窮乏と残酷を極むる搾取とを忍ぶべく定められている資本主義諸国の勤労大衆にとっては、ソビエト同盟は、恐慌からの革命的活路のため、資本主義撤廃のための闘争の必要を示す雄弁な実例であり、確乎たる証明である。だが帝国主義者共の計画は、要するに社会主義建設を失敗せしめ、ソビエト同盟を絞殺して、総ての国々に於ける労働者農民大衆を更に一層無慈悲に搾取するため、労働者農民大衆の経済的及び政治的奴隷化の体制を堅固化するために道を拓かんとすることにある。特に目立っているのは二個の帝国主義的憲兵ーヨーロッパの憲兵たる帝国主義フランス及び極東の憲兵たる帝国主義日本ーの同盟であって両者共にソビエト国家に対する出兵の発頭人たる役割を受け持って居るのである。

 日本帝国主義は極東すら攻撃することによって、それと同時に又は間もなくそれに引き続いてフランス及びその隷属国(ポーランド等々)が西部からソビエト同盟を攻撃するための諸条件を作ることになっている。日本が支那に於けるその略奪戦争に於いて、他の帝国主義列強及び国際連盟から全体として受けた支持は、先ず何よりも以上の如き反ソビエト計画によって証明される。支那の役割に共同する用意の有るイギリスは日本による満州の占領に反対しないでいるが、それはイギリスが一部分はアメリカ帝国主義の鼻をあかそうという考えによって導かれているのだが、やはり主としては反ソビエト戦線の参加者としてのその利害によって導かれているのである。支那全体を自己の従属下に置こうと努力しているアメリカは、それ故に、今日までのところ日本に対しまだ公然たる積極的方策をとるに至っていないけれども、日本帝国主義に対しては激しい対立をなしている。アメリカは一方に於いては戦争が長引く結果として日本が弱まるのを待つし、他方ではイギリスと日本との接近を恐れているのだ。だがそれにしてもアメリカ並びにその他の帝国主義列強は、何よりも先ず日本帝国主義がソビエト同盟に対する戦争に於いて前哨の任務を引き受けることを望んでいるのだ。

 ブルジョアー地主的日本は戦争発頭人たる役割を受け持って居るが、これは全く日本帝国主義の性質に合致する。日本に於いては独占資本主義の侵略性は絶対主義的な軍事的=封建的帝国主義の軍事的冒険主義によって倍加されている。日本及び(帝政)ロシアに於いては近代的金融資本の独占が、軍事的勢力の独占によって、広大なる領土の独占によって、外国諸民族、若しくは支那その他を略奪するための特別な便宜の独占によって、一部は補足され、一部は代位されている』(レーニン、1916年)。

 日本帝国主義が支那に対するソビエト運動を粉砕するために、支那の厖大な部分を又は出来える限り大なる部分を自己の植民地に転化するために、より強固な経済基礎を作り、原料資源、特に軍事工業及び軍需品のための原料資源を奪い取るために、またアジア大陸に於ける自己の地位を固め、かくて太平洋制覇のための新戦争に対し武装を整えんがためにその軍事的勢力の独占を利用することにある。

 日本帝国主義の軍事的進出は、重苦しい、激烈な経済恐慌によって激化されたところのその総ての内部的諸矛盾の激しい先鋭化と直接に関連している。日本の独占資本は、まだ前資本主義的諸関係の濃密な網によって纏われている。日本帝国主義の相対的な経済的弱点とその内部的諸矛盾の異常なる尖鋭さは、このことによって説明される。国内市場の狭隘さの原因となっているところの、国内に於ける封建制の強力な残滓、農民に対する半封建的な搾取方法とプロレタリアートの搾取の植民地的水準は、工業恐慌と農業恐慌との結合をもたらし、都市及び農村に於ける経済恐慌の未曾有なる尖鋭さをもたらした。日本の地主及び資本家は、支那に於ける戦争によって、恐慌からの活路を見出し高まりつつある大衆の革命運動を抑圧し、自己の植民地領有を拡大して支那の勤労大衆に対する尚一層の植民地的搾取を開始しようと企んでいる。

日本の共産主義者は、外部に対する日本帝国主義の侵略性と、その国内政治との間に於ける不可分的な関連外部に対する帝国主義的強盗戦争や、植民地の奴隷化と国内に於ける反動との間に於ける不可分の関連を理解せねばならぬ。日本帝国主義は戦争の道を進みつつ、軍事的=警察的天皇制の支配制を、勤労者に対する前代未聞の専制と暴力支配との統治を維持し強固にし、農村に於ける農奴的支配を強化し、大衆の生活水準を尚これ以上に低下せしめんと志している。

 戦争は必然的に国内の階級対立を極度に先鋭化している。それは日本のプロレタリアート及びその共産党に、戦争反対の闘争を労働者農民及び一切の勤労者の最も緊急な日常利益の為の闘争、彼らの経済的及び一切の奴隷化に反対する闘争と結びつけ、かくして帝国主義戦争を内乱に転化し、ブルジョア=地主的天皇制の革命的転覆を招来することの任務を課している。

 日本帝国主義の強盗戦争は、日本に於ける革命を遠ざける代わりに、最も間近く近寄せている。早くも戦争の当初に於いて支那の確立のため、その分割反対のための支那国民の頑強を抵抗と犠牲的な闘争に並んで、日本の軍隊内に於いても、また日本内治に於いても、帝国主義戦争反対の動揺が沸き立った。これらすべてのことは、日本帝国主義の冒険的計画が惨めな失敗を嘗めるであろうことを、充分可能ならしめる。かかる条件の下に於いて異常に重大な責任ある役割が日本共産党に課せられている。事件の今後の進行並びに、革命運動の今後の発展は著しく且つ決定的に、共産党の力と堅固さとに、何百万の勤労者を党のスローガンの下に結集し、彼らの闘争の先頭に立つその能力に、依存するであろう。だから日本共産党の思想的及びその他の勤労者層の広汎な大衆との今日まで未だ著しく弱い結びつきを拡大し強化するために、その一切の力を緊張することを要する。党は、如何なる犠牲を払っても、大衆の高まり行く活動性に対するその立ち遅れを一掃し、来るべき革命に確信を以って立ち向かいうる真実の大衆党とならねばならぬ。

posted by 小楠 at 17:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 共産主義の実態
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