2006年09月20日

リンドバーグ日記2

チャールズ・リンドバーグをご存知の方は多いでしょう。あの偉大な大西洋横断単独飛行をなしとげた方で、第二次大戦への米国の参戦には反対の立場でしたが、参戦の決定後は勇敢に従軍しています。
ここでは第二次大戦前のズデーデン問題なども出てきて、大戦史としての価値もあるでしょう。
今回も、チャールズ・リンドバーグ著「孤高の鷲」上から引用します。

引用開始
【1938年】
9月21日水曜日
 ヒトラーはどう見てもチェコ侵略の用意が出来ており、すでに兵力を国境地帯に配置ずみ。ケネディ大使の話によれば、ヒトラーはチェンバレン首相に向かい、必要ならば世界大戦も辞さぬと啖呵を切ったそうである。
 よしんば準備体制が出来ていなくとも、イギリスは戦う覚悟だとケネディは指摘する。この際、ドイツと戦端を開けば破滅的な影響をもたらすので、チェンバレンは何とかそのような大戦を回避したいと必死に努力している。 ケネディによれば、イギリスの世論はチェンバレンを戦争に追い詰めようとしているのだという。・・・チェンバレンはチェコとズデーデン問題でヒトラーに譲歩し過ぎたと、以前から批判の声が高かった。

【1939年】
1月7日土曜日
 
 各紙の朝刊がヨーロッパの航空事情に関して私がアメリカ本国に書き送った手紙の一部をとりあげ、記事にしている。ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙のパリ版に掲げられた記事の見出しは『リンドバーグ、米国に独空軍の資料を提供か』と。
 新聞記事がそうであるように、これまた不正確な記事ではあるが、誤った記述の中に、記事が自分の手紙に基づいて書かれたと確信させるに足る正しい内容が充分に盛ってある。・・・
 しかし、極秘情報が一様にワシントンの官辺筋から報道機関の手に渡るのは驚くべきことであり、迷惑この上ない。・・・・また政府の機密情報を明るみに出せばさまざまな困難が発生するにもかかわらず、それをあえて公表できる言論の自由があるとは何とも奇妙な話だ。・・・・

1月16日月曜日
 ・・・・新聞はあらゆる種類の不必要なトラブルをひき起す。責任のない、完全に自制心のない新聞は民主主義にとり最大の危険の一つと考えざるを得ぬ。完全に統制された新聞が、これまた危険であるのと同じことだ。

3月16日木曜日
 ドイツ、ハンガリア両国軍がチェコスロバキアを占領する。ヒトラー、プラハに入城。かくしてドイツの東方拡張政策は続く。

3月31日金曜日
 チェンバレン首相、ポーランドが侵略された場合にイギリスは同国を積極的に支援すると声明す。
 このポーランド情勢が動乱の原因となるかも知れぬ。ヨーロッパにおける現在の趨勢はまったく気に入らぬ。もしイギリスとフランスとがドイツの東進政策を阻止するならば、間違いなく戦争になる。

4月7日金曜日
 今朝、イタリア軍がアルバニアに進駐する。伊独両国とも間違いなく全東欧の支配をもくろんでいるのだ。

8月29日火曜日
 ・・・・朝刊の報道によれば、ソヴィエト軍がポーランド国境に集結しつつあるという。

8月31日木曜日
 ・・・話の最中、街に号外が出る。ポーランドがヒトラー提案の平和解決を拒否したという大見出しが出ている。

9月1日金曜日
 どの新聞もでかでかと大見出しで『ドイツ軍、ポーランドに侵入す』。ついに戦争が始まったのだ!イギリスとフランスとはどう出るのか。ドイツの“西の壁”を突破しようとすれば、アメリカが参戦しない限り両国は敗北を喫するだろう。・・・
 イギリスもフランスも、どうしてかかる絶望的な状況に自らを追い込んだのか。・・・両国とも軍事的には絶望的な立場にある。そしてダンチヒにせよポーランドにせよ、あるいはポーランド回廊にせよ、連合軍にドイツ本土内に攻め入らせるだけの説得力を持つ錦旗とはならぬ。・・・・

9月3日日曜日
 英仏両国、ドイツに対して宣戦布告!ドイツ軍のポーランド侵攻は続く。
 午後10時、アンと一緒にルーズベルトのラジオ放送を聴く。普段の話よりもましな内容であった。彼がもっと信頼できたらと思う。ルーズベルトは宣伝にまどわされぬようにと警告を発し――この国を中立の状態に置くべく努力すると誓約した。

9月7日木曜日
 やっと論文を一本、ラジオ放送用の草稿を二本、書き上げたが、出来事の進展ぶりがあまりにも早すぎるので、最初の二本はすでに中身が古くなっている。自分としては傍観者になるつもりはない。
 国家の将来の繁栄にとり絶対的に必要でない限り、この国が戦争に追い込まれるのを見たくはない。もともと政治や公的生活にかかわったりするのは好きではないが、この国の中でいま育ちつつある傾向を阻止する必要があるとすれば、自分はあえてそれに踏み切るつもりだ。
引用終わり

 英仏は、ポーランドを支援し、ヒトラーの提案を拒否するように働きかけました。これは英国に対するアメリカからの圧力があったようです。
posted by 小楠 at 07:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 書棚の中のアメリカ
この記事へのコメント
リンドバーグは、「言論の自由」と言ってメディアが暴走する危険性を見事に見抜いていますね(笑)。
今も昔も、変わらないようで…。
Posted by おしょう at 2006年09月21日 10:15
>>今も昔も、変わらないようで

昔からマスコミは世論を誘導しようとする傾向が強かったですねー。
戦争についても、政府の決断はなかなか慎重ですが、マスコミの方が開戦を煽り、国民がその方向へ進んでしまうことが多いようです。
Posted by 小楠 at 2006年09月21日 11:48
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