2007年12月25日

米国の極東進出

日米抗争の史実1

 今回引用する書籍は、昭和七年三月に発行され、同年四月には五十八版を重ねた、海軍少将匝瑳胤次著「深まりゆく日米の危機」です。昭和七年頃までの米国の動きから、当時の日本と日本人が米国に対してどのような感情をもって状勢判断をしていたかを知る資料になるものと思います。
写真はポーツマス講和会議時のルーズベルトと日本側全権小村
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引用開始
 既に1898年ハワイを併合し、フィリピンを割取して、極東進出の前哨線と足溜まりを獲得した米国は・・・・
 大統領マッキンレーはフィリピン獲得に対する内外の非難を緩和するため、政治、商業、人道上の三個の理由と二千万ドルの支払金とを以て、天下の耳目を掩いまんまとその目的を達した。
 その政治上の理由というのは『合衆国はもはや西半球内にその勢力を制限することが出来ぬような発展の舞台に到着したのである。近世交通機関の発達に伴い距離が縮小せられて合衆国は漸次フィリピンに近くなってきた。従ってアジア方面に於て優勢なる権力を獲得するのは合衆国にとって当然であるのみならず、その将来の繁栄のために必要欠くべからざる事件となった』と云うのである。が、この『必要欠くべからざる』など云うことは、米国建国の精神と従来採り来たれるモンロー主義とに決して一致するものではなく、即ち米国が帝国主義になったということを意味するのである。

 また商業上の理由というのは『米国の生産品と輸出貿易とに於ける莫大なる増進は、新たなる販路の大拡張を必要とする。商業上活動の根拠地を得ると云う欧州人の常套手段に倣わずしては、到底欧州諸国と競争することが不可能である。合衆国の政策は門戸開放であるが、この主義は先ず米国の政治上の勢力を確立しなくては維持することが出来ぬ。殊に最大市場を有する東亜の方面に於て米国の勢力を確立するの必要がある所以である』と云うのである。この議論は剣とドルの併進を慫慂するものであって、第一の政治的見地に基くものと同一なる、否もっと露骨に帝国主義的意味を表明していることは明らかである。
 最後に道徳上の論拠はスペインの植民政治の残酷をとなえ群島の無秩序状態を叙し、米国政治の根底をなす自由、平等、自治の精神を群島に普及せしむるは単にフィリピン人の利益なるのみならず、また人類一般の利益である。従ってかかる手段を採ることは合衆国が世界人類のために尽す義務であると云うのである。かかる道徳的理由は古往今来の外交的常套語で、別段大した意義をなすものではない。もし衷心よりかかる義務を感じているとすれば、世界至る所その手を貸すべき場所がある筈である。また自己の便宜からこれを言うも、ともすればこれまた無恥の広言となるに過ぎぬ。

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posted by 小楠 at 07:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 書棚の中の戦争