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日米抗争の史実6
今回引用している書籍は、昭和七年三月に発行され、同年四月には五十八版を重ねた、海軍少将匝瑳胤次著「深まりゆく日米の危機」です。昭和七年頃までの米国の動きから、当時の日本と日本人が米国に対してどのような感情をもってどのような状勢判断をしていたかを知る資料になるものと思います。
写真は昭和七年に発行された引用本です

引用開始
日本政府は石井大使を特派使節として米国に派遣し、我が国に対する米国民の不信疑惑の感情を一掃し且つ独支方面よりする反間運動を阻止せしめんことを欲して、米国政府と会商させたのである。
会商の結果両国政府に比較的好都合な覚書が交換されることになった。先ず国務卿ランシングから石井大使に宛てたものは、
『支那共和国に関して貴我両国政府の共に利益を感ずる諸問題につき、本官は最近閣下との会談中、意見の一致したるものと了解する所をここに閣下に通報するの光栄を有する』と冒頭して下のように述べた。
『合衆国及び日本国政府は、領土相接近する国家の間には特殊の関係を生ずることを承認す。従って合衆国政府は日本国が支那に於て特殊の利益を有することを承認す。日本の所領に接壌せる地方に於て殊に然りとす』
『尤も支那の領土主権は完全に存在するものにして、合衆国政府は日本国が其の地理的地位の結果、右特殊の利益を有するも、他国の通商に不利なる偏頗の待遇を与え、又は条約上支那の従来他国に許与せる商業上の権利を無視することを欲するものにあらざる旨の日本政府累次の保障に全然信頼す』
『合衆国及び日本国政府は毫も支那の独立又は領土保全を侵害するの目的を有するものにあらざることを声明す。且つ右両国政府は常に支那に於ていわゆる門戸開放又は商工業に対する機会均等の主義を支持することを声明す』
『将またおよそ特殊の権利又は特典にして支那の独立又は領土保全を侵害し、若しくは列国臣民又は人民が商業上及び工業上に於ける均等の機会を完全に享有するを妨害するものについては、両国政府は何国政府たるを問わず、これを獲得するに反対なることを互いに声明す』
これは1917年11月2日の日付であるが、これに対して石井大使からも同意義の回答を発した。これが11月7日を以て発表されたいわゆる石井ランシング日米新協商である。・・・・
支那が聨合国の勧説によって、1917年、聨合国の一員として参戦(第一次大戦)した動機には、種々魂胆があったことは勿論であるが、支那自身としては戦後の平和会議に発言権を得て、支那問題に対する列国の自由処分を妨げ、同時に戦利権の分配に与り国権恢復運動の機会を掴まんとしたのは当然であるが、其の背後に於てこれを操る主要人物は駐米公使ラインシュであったことは争われない事実である。彼は支那当路者に説くに支那は参戦の結果日本の圧迫より逃れ、同時に多くの利権を恢復し得るであろうと勧告して居ったのである。・・・・
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