2007年04月17日

天皇とグラントの対話1

民選議会設立についてのグラント将軍の意見

 アメリカ南北戦争で勇名をはせ、戦後は大統領を二期つとめたユリシーズ・シンプソン・グラント将軍(1822〜85)は、1879年6月に長崎に来航、国賓として約二ヶ月半日本に滞在しました。
この本は随行した書記のJ・R・ヤングの著です。
「グラント将軍日本訪問記」から、八月十日に明治天皇が将軍と非公式に会談された内容を対話式に見てみましょう。
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引用開始
[陛下]
 私はもっと早く卿とお会いしたかったのですが、政務多忙で本日やっとお会いできる機会を得、お元気そうにお見受けして喜んでおります。

[グラント]
 この国に参りましてから二ヶ月にならんとしております。陛下の政府ならびに貴国民から温かく迎えられ、またどこへ行きましても大変ご親切にしていただきましたから、思いのほか早く時がたってしまいました。来週の火曜日には箱根の温泉に行き、十九日か二十日に帰京することになっております。本月の二十七日に、一行と共に「東京」号に乗りサンフランシスコに向けて出航いたします。もう少し滞在したいところですが、残念ながら船に乗らねばなりません。

[陛下]
 できればもう少し滞在されますことを希望しますが、どうしてもその船で帰国されなければならないと言うことであれば、しかたがありません。今般卿にはわが国の実況を親しくご覧になりましたので、もしわが国のことについてご意見などもありましたら、お教えいただきたく思っています。

[グラント]
 陛下からこのようなお言葉をお聞きいたし大変うれしく思います。もとより最善の国策について論じる場合、その国の人びとこそいちばん適任ではありますが、思いついた意見を陛下に喜んでお話いたしたいと思います。
 長崎に着きましてから、この国の農業面と国民の進歩の状態などに大きな関心と注意を向けた結果、前よりもはるかにはっきり国情と国民についてわかるようになりました。
 私は久しく日本とこの国の発展に大きな関心を寄せてまいりましたが、どちらかといえば関心と同情はここに至ってさらに大きくなりました。今はっきり自分の意見を述べることができます。陛下の国民を別にすれば、私ほど日本の繁栄を心から願っている者はおりません。しかし、この点についていえば、私は大抵のアメリカ人の気持を正しく代弁しているのです。
 シンガポールよりこちら側では、アジア人と欧米人とを同等視して論じることができる、あるいは論じようとする新聞・雑誌がほとんど無いことを知りました。ただ『東京タイムズ』と『ジャパン・メール』の両紙だけが、東洋諸国にも尊重されねばならぬ権利があるかのように論じております。
 ほんのわずかな人を除くと、西洋諸国の官吏はみな、アジアの国々の権利を無視しております。私利私欲がどうであれ、彼らは清国や日本の権利を顧慮せずに権利を主張するのです。時には不公平や利己主義を目の当たりに見ますと腸(はらわた)が煮え繰り返ります。

[陛下]
私は深く卿の誠意を嬉しく思います。
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posted by 小楠 at 07:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 書棚の中の人物