2007年02月23日

スタール博士の講演2

日本は外交で譲歩するなかれ

 前回に続いて、昭和五年十月十九日、スタール博士が、一時帰国の前夜、東京中央放送局から全国中継でラジオ放送を行い、多大の感銘を与えた部分がありますので、「世界に生きる日本の心」から引用してみます。
この本については陸奥月旦抄様も記事にしておられます。
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写真は人力車上のスタール博士

引用開始
 日本は今や過去の孤立鎖国の域を脱して、世界の列強の一つとなった。日本は世界の進歩発達に際して真のリーダーとなるべき幾多の機会を有したが、勇気と確信を欠きたるためにしばしば絶好の機会を失ったことは痛嘆の至りである。日本はこの大責任を果たさんためには高遠の理想と、高尚なる目的と、確乎不抜の決断と、特別の智慧を有たねばならぬ。
 今日何れの国家と雖も利他的なものはない。また、これを期待することは愚である。日本は国際親善の精神と正義の観念とをもって、自主的見地から勇往邁進せば、反って世界の尊敬を受け自然のリーダーとして立つことができると信ずる。(中略)

 日本は1895年の日清戦争以来、常に外国の圧迫に対して譲歩に譲歩を重ねて来た。日本は他国の要求及び意志に従わんとして常に国家の重大事に関して譲歩したのである。私は日本の譲歩の動機は国際協調及び国際親善のために寛大なる態度に出でたのであろうと信ずる。
 然しながらかかる政策が繰り返されたならば、外国はこれを目して日本は国際親善の目的に非ずして、むしろ自己の行為または判断の不当を容認せるか、然らざれば卑怯に起因せるものなりと誤解し、その結果日本を軽蔑するようになって来るのである。斯様に推移して行くならば、日本は将来必ずや国権を主張せねばならぬ機が到来するであろう。しかしながらその時は日本の主張が有効となるにはあまりに遅過ぎるのは遺憾である。要するに日本の諺に「後悔先に立たず」という名言がある。

 今これを例証せんとせば、米国の排日移民法通過の際の日本の態度の如きはその適例である。日本政府当局者は何故に日本国民の名誉のために、且つ正義人道のために、正々堂々と日本の正当の主張をなさなかったか。米国との親善を希望して米国に遠慮し、最後まで日本の主張を率直に米国民に披瀝しなかった故に、反って不幸なる結果を招来したのである。

 日本はワシントン会議に於いて日本の国防上多大なる犠牲を払って大譲歩を為した。国際関係に於いては国家と国家との間は対等であらねばならぬ。然るに日本は何故にワシントン会議に於いて、自ら進んで世界列国環視の前で、巨艦に於いて対英米六割の比率を承認して自国の劣等なることを制定する条約に調印したのであるか。
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posted by 小楠 at 07:34| Comment(6) | TrackBack(0) | 書棚の中の日本